ポプシクルの冷蔵庫

住宅街でも薪ストーブ。ご近所様に迷惑をかけずに焚く方法

憧れの薪ストーブを新居に導入すると決める前に、とても悩ましい問題がありました。それは薪ストーブから出る煙とご近所様への臭いです。

一時期はこれが気掛かりで、導入自体を諦めていました。しかし、夢は捨てきれずまたしつこく導入可能かどうか?色々調べ始めると、意外や最近の薪ストーブは様々な種類の触媒方式や、二次燃焼室があったりしてかなりクリーンに薪を燃焼しているらしい?と言う事が分かってきました。

 

更に調べますと、「煙突の種類」と「焚き方」の方がストーブ本体に備わっている燃焼方式如何よりも「煙や臭いの出方」においては遥かに重要であるらしいのです。

ここまで調べても実際に試してみない事にはどの程度かさっぱり分かりませんがのるかそるか、お金はかかりますが、実験的に設備してみる事にしました。自分で設置するからある程度は節約出来ます。

以下、私が気をつけている、または設備する前に気をつけた事のご紹介です。

煙が出るメカニズム

木を燃やすと煙が出ます。当然ですね。Wikipediaによりますと木材を不完全燃焼させた時の煙の成分はその殆どがスス(炭素)だそうです。

薪に火をつけると可燃性ガスが発生します。このガスは酸素とくっついて燃焼。全部酸素とくっつけば全く煙は出ない(完全燃焼)事になります。

薪ストーブ自体の燃焼効率はそれほど良くありませんので、酸素とくっつかずに煙突から出て行くものもいます。これが冷やされると出来るのが煙突に付くススです。

燃焼反応を促すのが熱で、この熱を低下させ燃焼にブレーキをかけるのが薪に含まれている「水分」です。生乾きの薪を焚くと盛大に煙が出るのはこういう事だったんですね。

ですから目に見える煙や臭いを減少させるには、完全燃焼に近い状態で焚く事が重要である事が分かります。

煙突にお金をかける

薪ストーブは煙突の性能が命。薪を出来るだけ完全燃焼に近い状態にするには、薪が出す可燃性ガスに見合った酸素量が必要になります。

酸素の供給動力は「煙突の引き(ストーブ内に空気を吸い込む)」そのものですからより良く空気を「引いてくれる」煙突が必要なんですね。

そんな煙突は押し並べて「長い煙突」、「断熱された冷え難い煙突」とされていて気密性が良いに越した事はありませんから溶接で密閉された二重断熱煙突であれば最高です。

最高ついでに価格も高いのですが(汗)、性能は折り紙付きで無風時でも室内の煙突からは上に向ってビュービュー引っ張っているのが分かります。

コストの問題や、設置場所の問題で煙突が短くしか延ばせない場合は溶接二重断熱煙突を。長く延ばせる場合はもう少しコストがかからない価格の煙突を選択出来ますね。

ご近所様の迷惑になっては台無しですから、煙突だけは引きの良い物を選ぶ事が大切です。

どんどん焚く

いわゆるオーロラバーン(チラチラと美しく焚く状態)や、薪の消費を抑えるために流入空気を絞って焚いたりする事は殆どしません。

この状態は炎の見た目がとても美しく、魅力的なのですが基本的に酸素が足りない状態になる事が多く、煙を押えたい焚き方の場合はオススメ出来ません。

例外的にストーブの温度がかなり高い状態の時は、オーロラのように揺らめく炎になるように空気を絞っても煙が出ません。

これはストーブ内の温度がかなり高いため、不完全燃焼で出た煙も目視出来ない程度に燃えてしまうからだと思います。

しかし私のストーブの場合はこの状態は長く続く事なく、徐々にストーブの温度が下がり始めます。するとまた煙が出るようになりますので、オーロラのような炎は限られた時間しか楽しめないのです。

2018年追記

広葉樹の薪を使うようになってから、上記のような印象は無くなりました。良い薪を使うと空気を絞った状態でも継続して温度の高い状態を保つ事が出来ます。薪は良いものを使えとはこういう事か!とか思いましたね(^◇^;)

周辺の臭いや煙対策には常に薪から目視出来る炎が直接上がっている位が丁度よいです。逆にこの状態でストーブの温度が上がってさえすれば、煙突トップから目視出来るような煙は出ません。

薪をけちらずに安定してどんどん焚きましょう。

焚き始めの時間帯

使用しているストーブにもよりますが、私のストーブ(Pecan Bakers Oven)の場合焚き始めから15分くらいはトップから煙が出ます。

「ストーブを焚いているな」と感知出来るのは恐らく焚き始めから30分くらいだと思っています。

ですので、その30分間、余裕を持って1時間位、ご近所様が洗濯物を干し始める時間帯よりずらせば、煙に関するトラブルは避けやすいのでは?と思います。

もっと言えば午前中は焚かない位の方が良いのかも知れません。実際私は午前中の内は殆ど焚いた事がありません。

鋼板製薪ストーブを使う

私がピキャンベーカーズオーブンに決めた理由は料理に使えるという理由が殆どですが、鋼板製薪ストーブの中でも値段が手ごろだった事ともう一つ。

鋼板製の薪ストーブは温度の立ち上がりが早い事です。

この事は冷めやすいと言う事も意味するのですが、ストーブ自体の温度が上がり巡行運転の温度帯に達する時間が非常に早いのです。

巡行運転の温度になれば目視出来る煙はまず出ませんから、ご近所様に迷惑になる確率もぐんと下がると思います。

ちなみに熱容量の大きな大型の鋳鉄製の薪ストーブは立ち上がりがとても遅いです。逆にひとたび暖まれば冷め難いので丸一日中焚いているような使用がぴったりですね。

住宅街などで使うストーブは、さっと立ち上げてすぐに暖まり、ガンガン焚いてあっという間に巡行運転の温度になるような手返しの良いストーブの方が良いんじゃないかなと思います。

こちらの焚き方の記事もご参照下さい。

乾燥した薪をつかう

煙を出さずに薪ストーブを焚くためには、しっかりと乾燥した薪を使いたいですね。これは煙突と同じくらいに重要です。

あまり威張っては言えないのですが、私はいわゆる広葉樹の良い薪を使った事がありません。もっぱらセルフビルドで建てた家の材料の残り。杉やヒノキ、松などの建築材料を薪にしています。

松が一番燃え難いのですが良く燃える杉やヒノキの中に混ぜて焚くと問題なく燃えますね。

建築材料ですから水分量はかなり少なく、どんどん温度が上がります。鋳鉄の薪ストーブにはもしかしたら良くないほどの燃え方かもしれませんが、鋼板製薪ストーブであれば全く問題ありません。

煙が出るメカニズムで触れたように、薪の中にある水分は燃焼反応のブレーキになってしまい、結果、煙が発生してしまいます。良く燃える乾燥した薪は煙も出ず、とても暖かいのです。

煙突の高さを上げる

煙が出る煙突トップの高さを単純に上げる事も煙対策として非常に効果的です。私の煙突は地上から8.9mの位置が煙突のトップ位置です。二階建ての住宅の屋根の最上部よりは遥かに高い位置ですから、直接煙がご近所様にかかる事が少ないと思います。

それでも風の吹く方向にもよるとは思いますが、初期に出る煙もかなり高い位置に飛んで行きますから、気分的には安らげます( ´ ▽ ` )ノ

煙パトロールをしよう!

どの程度の温度で薪ストーブを焚けば煙と臭いが出ないか、最初の内は分からず手探り状態でした。ですから、自分の薪ストーブにあった焚き方が分かるまでは頻繁に外に出て、煙や臭いの状態を確認するために自宅の周辺をぐるっと1周見回りをしていました。

すると炎の上がり方と煙や臭いの関係が徐々にわかるようになってきます。樹種や形状(薪の大小)によっても、入れるタイミングによって煙が出たり出なかったりします。

そのあたりをコントロールする事が出来るようになると、最小の煙と臭いに押える事が出来ますし、ストーブを使用する時間もより自由になって来ると思います。

最近では煙突が立っている住宅をよく見るようになってきました。薪ストーブが好きな私としては嬉しいのですが、中には一日中白い煙を上げている煙突も見かけます。

隣家まで遠い訳でも無いのでもう少し気を使って焚いたらいいのにと思ってしまいますね。

1シーズンで溜まったスス

二重断熱煙突では私の使い方(焚くのは殆ど夜だけ)ではちり取り一杯にもなりません。

さらさらのススで掃除する甲斐も無いのですが、ドロドロしたタールが付くような焚き方だと住宅街では間違いなく苦情が来ると思いますので、適正に焚けていると思うようにしています。

まとめ

煙が付き物の薪ストーブですが焚き方を工夫、練習すれば煙も臭いもかなり抑えて焚く事が出来、ご近所様にもあまり迷惑をかけずに済んでいると思います。

私の家は煙突から両お隣様の軒まで6mほどの狭い土地ですが、1シーズン焚いた後、お隣様に煙などがご迷惑になっていないか?を確認しましたが、ストーブが設置されて煙突がある事すら知らなかったと仰って頂けました。

引き続き今シーズンも煙には気をつけて、より上手に焚けるように技術を磨かなければなりません。

住宅街で薪ストーブを使用する場合は以上のようにかなり注意深く使用しなければなりません。煙を出さないように焚くには技術が必要で、私も研究中です。単純な作業ですがなかなか奥が深く、勉強の余地がまだまだあります。

2シーズン使ってみた感じでは薪ストーブは煙が出るのが当たり前という認識はなくなりました。

逆に煙が出ているのは気を使った焚き方には見えないのです。出来るだけきれいな排気で薪ストーブを焚く為には、色々な気を使う部分が出てくるのは当然なのです。

そんな事も含めて楽しめる方には是非オススメしたい設備ですね。薪ストーブがある事で、何にも代えられない暖かさと「家の中で火を見る事が出来る」冬の楽しみが1つ増えるのはとても嬉しい事だと思うからです。