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木を外壁に使う 年数経過でどうなるの?

時代の流れでしょうか、建築業界の使用材料はALCやサイディング、ビニールクロスに化粧合板。構造材は集成材が当たり前。なんでもかんでも安定した寸法、性質の材料ばかりになってしまったようです。

無垢の木なんて寸法も、性質も不安定な材料は、現代建築的には不安しか無い材料らしく、何処もかしこも排除対象。

なーんてつまらない建築業界。それならば!よっしゃ!まがいなりともアウトドアハウスの施主兼、セルフビルダーとしてここは是非に自然素材である木材を徹底的にフィーチュアし、建築材料としての優秀さ、美しさを盛大に崇めた偏見に充ち満ちたコンテンツを構築しませう!

風合いという性能

そうです、「風合い」。英語ではhandlingと言うそうです。つまり触った時の感触やら感覚から受け取る事が出来る「素材感」。

残念ながら現代の建築材料で風合いに重きを置いた物は皆無ですね。全てが人工的な素材から構成されていますから、触らずともその固さ、冷たさを想像出来ます。風合いで言えば無機質な風合いでしょうか?

コンクリートに囲まれて暮らしたい方も一定数いらっしゃいますが、私はもっと暖かみのある物の中で暮らしたい。

木で出来た天井や床、土で出来た壁、紙で出来た窓や庭の石。旧来の日本建築には素晴らしい風合いの材料を合理的に使用してきました。

自然のものだから同じものは1つも無い。そんな不安定で不揃いだからこそ生まれてくる魅力が「木の風合い」だと思います。

実際の耐久性

セルフビルドで建てた「とみわみの家」の前に実験的に建築した「モノオキ小屋」があります。耐久性を調べるために杉の赤身の板を使い外壁を構成しました。

完成から5年を経た木で出来た外壁の現在が下の写真です。

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良い感じに古びてお気に入りですが、建築当初からすれば思いもよらぬほど縮んでいます。

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一番下端は相じゃくりの角がもう落ちそうです。

段付きの部分を「しゃくり」と言うのですが、しゃくり自体は9mmほどで2mmすかして貼ったので7mm掛かっていた事になります。

それが落ちそうと言う事は片側3.5mm縮んだ事になりますね。板1枚105幅ですから105mm → 98mmになったという事です。

確かに変形は想像よりも大きく、ずっと変わらないと言う現代建築には不向きかもですね。

無塗装は腐るのか?

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建築当初のモノオキ小屋

一番始めの色はこんなですから自然が色を洗い流してしまう力は凄いですね。

とみわみの家

手前が現在のモノオキ小屋(5年経過)

ちなみに黒っぽくも赤っぽくもみえる外観は「墨汁と弁柄を秘伝のレシピにて調合し、ハケで塗りたくった」セルフ塗装。ですから塗料と呼ぶには差し出がましい代物なので、取れちゃっても仕方がないのですが。

雨風が当たる東側は色落ちが一番激しいのですが、木自体は全く腐る事なくいまだに元気です。

木が腐る現象は腐朽菌(ふちくきん)が発生しやすいようなジメジメした環境が必要ですから、単純に乾いてさえいれば腐りません。

木腐れ対策には、日当たりの言い場所を木の壁にする、壁裏に空気の通り道を付ける、等の対策をしておく事が重要で、塗装の有り無しや塗料の性能はあまり関係が無いと思います。

対策さえしておけば腐る事よりも、先ほど触れた変形の方が建築的には問題となりやすいと思います。

そんな理由からとみわみの家では外壁部分に塗料を使わずに「無塗装」です。木のままの風合いがとても気に入っています。

素材の特性に合わせた使い方

この実験的に作ったモノオキ小屋の外壁が以上のような結果でしたので、第2弾のとみわみの家では変形対策でこのようにしました。

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分かりますでしょうか?杉の赤身の板を押えるように胴縁を打ってあります。平面図はこちらです。

外壁仕様書

平の杉板を幅45mmの押え板で留めます。この位かぶっていればいくら縮んでも大丈夫。

こんな外壁は施工にコストがかかるので、東面と南面のみ木製の外壁を採用して北と西面はガルバリウムにしました。

風通しが良く、日も良く当たるので常に乾燥していてこれなら腐る要素がなさそうです。

セルフビルドには使いやすい素材

施工する場所や環境、施工方法を工夫すれば木材は十分な耐久性を発揮する事が実体験を通して分かりました。

身近な木だからこそ特別な道具がなくても加工出来ますし、セルフビルドにとっては一番好都合な外壁の材料でしょう。

釘で留まっているだけですから、どこか1枚だけ交換、なんてことも簡単に出来ます。サイディングなどでは到底実現出来ない手軽さです。

セルフビルドだからこそ選択出来る幸せ。

しかし。いくらセルフビルドに好都合とはいえ、住宅メーカーが積極的に木の素材を外壁に採用するのは難しいでしょう。

そんな事から木の外壁はセルフビルドの為にあるといっても過言ではありません。見た目がお洒落で、耐久性も素晴らしい。年を追うごとに変わっていく風合いも楽しめます。

私の息子たちはこの家を親しみを込めて「木のお家」と呼んでいます。木のぬくもりのある外観は、家という物質に美しい生命感を与えてくれます。

使うためには工夫も必要ですが、それだけの価値があったと思っています。

 

 

 

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